抄録
症例は21歳男性。感冒様症状が先行した急性心筋炎の診断で当院へ搬送された。来院時心原性ショックを認め,人工呼吸管理下に大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping, IABP),カルペリチド,ステロイド短期大量投与を開始した。しかし第12病日に心停止となり,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入した。また脳保護を目的に脳低温療法を開始した。その後順調に経過し,第16病日にPCPSより離脱に成功したが,第24病日と第29病日に左鼠径部の血管縫合部より拍動性の出血を認め,2度の緊急血管形成術を行った。送血カニュレーションを行った左浅大腿動脈は感染に伴い一部壊死しており,同部位を切除した後に欠損部位に対して右下腿より採取した大伏在静脈をパッチとして被覆し再建した。切除標本の病理組織像では感染した動脈壁に炎症細胞の浸潤を認めず,高用量ステロイド投与の影響等が考えられた。慎重にリハビリテーションを行い,第73病日に独歩退院した。