2014 年 21 巻 5 号 p. 511-515
症例は63歳男性。発熱で近医受診しインフルエンザウイルスA H1N1抗原陽性によりオセルタミビルが投与された。第5病日に高度な呼吸不全が出現し本院に搬送された。非侵襲的陽圧換気,ペラミビル,ステロイド短期大量投与による治療を導入し,第6病日播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation, DIC)を合併し抗凝固療法を導入した。呼吸困難が増悪したため第13病日気管挿管を行い,第14病日体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を導入した。しかし病状の改善が得られず長期のECMO管理を強いられた。第34病日上部消化管出血を合併し,第52病日多臓器障害のため永眠された。ECMOによる治療中は回路内の凝固,溶血によるDIC類似の病態が生じやすく,出血性合併症に注意した管理が必要と考えられた。