抄録
Lemierre症候群は遷延性細菌感染による咽頭炎と,内頸静脈の血栓性静脈炎を呈し,肺などの様々な臓器にも転移性の血栓を生じる重篤な感染症である。稀な疾患であるが,本疾患が疑われる症例に対しては,早期に複合感染を想定した広範囲抗菌薬による治療を開始して炎症巣の拡大・転移を防止することが重要である。今回,発熱,呼吸困難,左内頸静脈血栓,およびFusobacterium necrophorumなどの嫌気性グラム陰性菌による菌血症を呈し,両側の胸水および膿胸を伴うLemierre症候群の1例に遭遇した。抗菌薬療法により全身状態は改善し,線維素溶解薬の胸腔内投与によるドレナージにより膿胸を有効に治療し得た。本疾患は早期の適切な治療が重要であり,膿胸を合併する場合,線維素溶解薬の胸腔内投与によるドレナージの施行は試みる価値のある治療法であると考えられる。