日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に対し急性期からトルバプタンで治療し,長期コントロールできた1症例
萩原 信太郎上野 剛濱崎 順一郎山口 俊一郎有村 敏明
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2016 年 23 巻 1 号 p. 35-38

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抄録
症例は80歳,男性。倦怠感を主訴に近医受診し,血清Na 114 mmol/lと低Na血症を認めた。意識障害および呼吸不全が出現したため当院紹介となり,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion, SIADH)の診断でバソプレシン2受容体拮抗薬トルバプタンを開始した。6時間ごとに評価を行い,血清Na 4~10 mmol/l/dayで上昇し,第5病日には意識障害も改善した。トルバプタンの内服を継続し,3ヶ月以上の経過で重篤な副作用なく,Na値も安定して経過した。トルバプタンは自由水の排泄を増加させて低Na血症を改善するため,従来の治療に比べ患者負担が少なく,SIADHの原疾患治療中および緩和ケア期の対症療法として有用な可能性がある。
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© 2016 日本集中治療医学会
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