日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
卵円孔開存に伴う椎骨動脈閉塞で発症し,D-dimerが軽度上昇した全身性塞栓症の一例
加藤 晶人池田 哲也神野 崇生森嶋 啓之長島 梧郎
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2016 年 23 巻 6 号 p. 660-665

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抄録

肺塞栓症や深部静脈血栓症はD-dimerが上昇することが多く,卵円孔開存に伴う奇異性塞栓症の原因となる。D-dimer上昇が軽度であったために塞栓源精査が遅れ,繰り返す脳梗塞で原因追究できた卵円孔開存の一例を経験した。症例は52歳,男性。左後下小脳動脈領域の脳梗塞にて入院後,6日目に右視床梗塞,8日目に左椎骨動脈急性閉塞を認め,血栓除去術を施行した。回収された血栓から塞栓症と診断し,経食道心エコーで卵円孔開存を認め,さらなる検査にて深部静脈血栓症,肺塞栓症が判明し,抗凝固療法を開始した。卵円孔開存による奇異性塞栓症は近年提唱されたembolic stroke of undetermined source(ESUS)に含まれ,塞栓源精査は必須である。脳梗塞によりD-dimerが軽度上昇するが,その中に肺塞栓症や深部静脈血栓症もあることを考慮すべきと考えられた。

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© 2016 日本集中治療医学会
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