抄録
近年アルブミンとその重症患者に対する投与に関する研究が多く発表され,異なった病態において治療での臨床使用に重要な知見がもたらされた。急性期に血清アルブミンの目標値を2.5~3.0 g/dlに設定してアルブミン投与を行った臨床研究は多いが,アルブミン投与の優位性は示されていない。血管内容量減少および重症敗血症の患者へのアルブミン投与は,晶質液投与と比べた場合,死亡率を改善する効果はない。また,外傷性脳損傷患者での輸液蘇生や急性脳梗塞の初期治療に有効とはいえない。前者では予後の悪化が指摘されている。一方,肝硬変腹水例において高張アルブミン投与は腹水消失率を高めるとともに,腹水再発を抑制し,長期投与で生存率も改善する。また神経疾患に対する治療として,アルブミンを置換液とした治療的血漿交換療法は有効である。アルブミン投与に明確なトリガー値はなく,疾患や患者の状態を勘案して使用を決定する必要がある。