抄録
一般的にサイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)感染は免疫不全状態で起こる。集中治療管理下でCMV腸炎を発症した1例を経験した。症例は33歳,男性。急性心筋梗塞に伴う心室細動に対し,体外循環式心肺蘇生法下の冠動脈再灌流療法を行いICUに入室した。入室後,横紋筋融解症による急性腎傷害を認め,持続的血液透析濾過管理中であった。入院第19病日に大量下血を認め,緊急手術(左半結腸切除,人工肛門造設術)を施行した。CMV antigenemiaおよび病理組織標本よりCMV腸炎と診断,ganciclovir投与を開始した。以後の経過は良好で,神経学的後遺症なくICUを退室した。集中治療管理下では免疫能が低下する可能性が示唆され,本症の発症を留意すべき必要があると考えられたため報告する。