日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
呼吸筋麻痺と四肢麻痺の時期が乖離し診断に苦慮した呼吸筋型筋萎縮性側索硬化症の1例
米澤 直樹武居 哲洋中山 祐介山田 広之藤 雅文永田 功
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2018 年 25 巻 3 号 p. 190-193

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抄録
四肢筋力低下がなく人工呼吸器依存となる筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)はまれである。前日まで仕事に通っていた78歳の男性が,突然の呼吸困難と意識障害で搬送された。呼吸はほぼ停止しPaCO2は138 mmHgであったため,直ちに気管挿管・人工呼吸を開始した。高二酸化炭素血症の改善に伴い意識障害は回復し,神経筋疾患を念頭に鑑別診断を進めた。超音波検査で両側横隔膜麻痺を認めたが,第7病日の気管切開術施行後は人工呼吸器装着のままICUフロア内を歩行可能であった。診断に苦慮したが,深部腱反射の亢進と四肢の筋萎縮が緩徐に進行し,針筋電図検査で神経原性変化を認め,第36病日にALSと診断した。肺活量は約600 mlから回復せず,無気肺の反復により人工呼吸器依存となったが,第118病日のICU退室時まで歩行可能であった。ALSはしばしばICU入室後に診断に至るが,四肢筋力低下のない呼吸筋麻痺患者においても,ALSの鑑別が必要である。
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© 2018 日本集中治療医学会
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