四肢筋力低下がなく人工呼吸器依存となる筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)はまれである。前日まで仕事に通っていた78歳の男性が,突然の呼吸困難と意識障害で搬送された。呼吸はほぼ停止しPaCO
2は138 mmHgであったため,直ちに気管挿管・人工呼吸を開始した。高二酸化炭素血症の改善に伴い意識障害は回復し,神経筋疾患を念頭に鑑別診断を進めた。超音波検査で両側横隔膜麻痺を認めたが,第7病日の気管切開術施行後は人工呼吸器装着のままICUフロア内を歩行可能であった。診断に苦慮したが,深部腱反射の亢進と四肢の筋萎縮が緩徐に進行し,針筋電図検査で神経原性変化を認め,第36病日にALSと診断した。肺活量は約600 m
lから回復せず,無気肺の反復により人工呼吸器依存となったが,第118病日のICU退室時まで歩行可能であった。ALSはしばしばICU入室後に診断に至るが,四肢筋力低下のない呼吸筋麻痺患者においても,ALSの鑑別が必要である。
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