日本集中治療医学会雑誌
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25 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 横田 泰佑
    2018 年 25 巻 3 号 p. 171-177
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/05/02
    ジャーナル フリー
    ICUにおいて,新規発症の心房細動は一般的な合併症である。特に心臓手術の術後心房細動(postoperative atrial fibrillation, POAF)の発生率は高い。しかし,心臓手術と比較して,心臓手術を除くPOAFに対する情報は十分ではない。各々の手術でPOAFは術後2日目に発症しやすい傾向にあり,POAFにより入院日数が延長し,死亡率が増加する。予防的薬剤はPOAFを効果的に減少させる可能性がある。POAF発症後は,レートコントロールまたはリズムコントロールが行われるが,これらの治療が実際に有効かどうかは不明である。周術期管理を行う際は,肺切除術では術式によりPOAFの発生率が異なるため注意する。術前からスタチンとβ遮断薬を内服していた患者では内服を継続し,血清マグネシウム濃度が低い場合は,マグネシウム製剤の補充を考慮する。POAFの定義自体が各研究により異なり,不明な点は多い。本稿では,主に肺切除術,食道切除術,肺移植術のPOAFの疫学,危険因子,予防法,治療法について解説する。
原著
  • 久保 飛鳥, 廣瀬 智也, 小川 新史, 山田 知輝, 中江 晴彦, 岸 正司, 山吉 滋
    2018 年 25 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/05/02
    ジャーナル フリー
    【目的】気管支鏡による偽膜形成の評価は,受傷時に正確に判断できないことがある。そこで,初療時胸部CT検査が気道熱傷の重症度評価に有効か検討した。【方法】2011年4月から2016年12月に搬送された気道熱傷症例を対象に,胸部CT検査で中枢・末梢気管支壁肥厚を測定し,気管支鏡検査による重症度分類や臨床経過との関係を後ろ向きに検討した。結果は中央値で示す。【結果】症例は36例,年齢64.5歳であった。そのうち,気管支鏡検査による重症度評価かつ胸部CT検査が行われていたのは18例であった。重症度が高いほど,有意に中枢と末梢の気管支壁の肥厚を認めた(中枢:Grade 1:5例,1.55 mm,Grade 2:4例,1.89 mm,Grade 3:3例,4.39 mm,Grade 4:6例,3.77 mm,P<0.01,末梢:Grade 1:1.45 mm,Grade 2:2.06 mm,Grade 3:3.40 mm,Grade 4:3.62 mm,P<0.01)。【結論】初療時胸部CT検査を行うことで,気道熱傷の重症度を早期に予測することができる可能性がある。
症例報告
  • 武田 圭史, 土岐 崇幸, 干野 晃嗣, 斉藤 仁志, 柳田 雄一郎, 森本 裕二
    2018 年 25 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/05/02
    ジャーナル フリー
    気管支拡張症は気管支の不可逆的な形態変化を呈する慢性の進行性疾患であり,反復性の気道感染症を引き起こす。急性増悪例では時に治療に難渋し,致死的になりうるが,定まった有効な治療法はない。症例は59歳,女性。30年前に気管支拡張症と診断され,外来管理されていた。呼吸困難感を主訴に救急搬送され,CT検査で著明な気管支拡張と気管支内に液面を形成するほど多量の喀痰貯留を認めた。ICUで人工呼吸管理,薬物的治療,体位ドレナージが開始されたが治療反応に乏しく,入院7日後よりゲンタマイシン120 mg 12時間ごとの吸入療法を開始したところ,喀痰の減少と呼吸状態の改善を認め,治療開始34日目で人工呼吸離脱が可能となった。通常の薬物・理学療法に抵抗性の気管支拡張症急性増悪に対し,ゲンタマイシン吸入は有効な可能性がある。
  • 米澤 直樹, 武居 哲洋, 中山 祐介, 山田 広之, 藤 雅文, 永田 功
    2018 年 25 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2018/05/01
    公開日: 2018/05/02
    ジャーナル フリー
    四肢筋力低下がなく人工呼吸器依存となる筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)はまれである。前日まで仕事に通っていた78歳の男性が,突然の呼吸困難と意識障害で搬送された。呼吸はほぼ停止しPaCO2は138 mmHgであったため,直ちに気管挿管・人工呼吸を開始した。高二酸化炭素血症の改善に伴い意識障害は回復し,神経筋疾患を念頭に鑑別診断を進めた。超音波検査で両側横隔膜麻痺を認めたが,第7病日の気管切開術施行後は人工呼吸器装着のままICUフロア内を歩行可能であった。診断に苦慮したが,深部腱反射の亢進と四肢の筋萎縮が緩徐に進行し,針筋電図検査で神経原性変化を認め,第36病日にALSと診断した。肺活量は約600 mlから回復せず,無気肺の反復により人工呼吸器依存となったが,第118病日のICU退室時まで歩行可能であった。ALSはしばしばICU入室後に診断に至るが,四肢筋力低下のない呼吸筋麻痺患者においても,ALSの鑑別が必要である。
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