抄録
近年,左心補助人工心臓治療は重症心不全患者の生命予後・QOLを著明に改善することが実証され,使用が増加している。しかし,本邦では欧米に比して心移植ドナー数が少ないことから,心移植待機者の増加に伴い心移植待機期間は長期化している。したがって,重症心不全患者は長期にわたり補助人工心臓を装着し,心移植待機期間中の合併症予防に努めると同時に,身体機能を良好な状態に保つ必要がある。心臓外科術後は骨格筋蛋白異化が著明に亢進することが明らかとなり,術後早期の蛋白異化への予防策として神経筋電気刺激療法を用いた報告が出てきている。左心補助人工心臓装着周術期においても,身体機能を維持するには骨格筋蛋白異化の抑制が重要であると思われるが,エビデンスが十分ではない。本稿では,左心補助人工心臓装着患者を対象とした神経筋電気刺激療法を用いたリハビリテーション介入について,これまで我々が実践してきた経験を含め概説する。