日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
リドカイン・プロピトカイン配合クリームにより中毒性メトヘモグロビン血症をきたした乳児例
金子 尚樹高梨 浩一郎阿南 英明
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2019 年 26 巻 2 号 p. 111-114

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抄録

リドカイン・プロピトカイン配合クリーム(EMLA®クリーム,佐藤製薬)は,皮膚レーザー照射療法や注射針・静脈留置針穿刺時の疼痛緩和目的に使用される。本症例は生後1か月児で,同薬剤を投与後にメトヘモグロビン(methemoglobin, MetHb)血症をきたし,集中治療管理を要した。メチルチオニニウムの投与により症状は改善し,神経学的後遺症もなかったが,本邦において同薬剤の投与によりMetHb血症をきたした報告例はこれまでにない。本症例は早期乳児期であり,MetHbを還元するcytochrome-b5還元酵素活性が低値であることや,易酸化性である胎児ヘモグロビン(HbF)の存在を背景に,同薬剤投与によりMetHb血症をきたしたと考えられた。新生児・乳児に対しては特に注意が必要であり,年齢ごとの適応投与量・塗布時間に沿って使用するべきである。そして,酸素投与によっても改善しない全身チアノーゼや,SaO2とSpO2との間に乖離を認めた際は,MetHb血症を鑑別する必要がある。

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© 2019 日本集中治療医学会
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