2019 年 26 巻 5 号 p. 396-400
急性心筋梗塞から心原性ショックを呈し多臓器不全に陥ったが,体外設置型補助人工心臓を装着し,その後,植込み型補助人工心臓に移行し自宅退院した若年者の一例を経験した。患者は28歳,男性。左冠動脈前下行枝と対角枝の超遅発性ステント内血栓症により,急性心筋梗塞を発症した。経皮的冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty, PTCA)を施行し再灌流を得るも,ステント内血栓症を再発した。左冠動脈回旋枝の慢性完全閉塞も伴っており,心原性ショックから多臓器不全を呈した。冠動脈バイパス術を施行し集学的治療を行ったが,改善を認めず体外設置型補助人工心臓を装着した。その後,多臓器不全からは回復したが,心機能の改善は認めず,補助人工心臓からの離脱は困難であった。このため,心臓移植登録後に植込み型補助人工心臓への植え替え手術を行い,順調に経過し自宅退院し,現在心臓移植待機中である。