【はじめに】下部消化管穿孔は敗血症を引き起こす代表的な疾患である。今回,高齢者の下部消化管穿孔における凝固障害について検討した。【方法】2011年4月〜2017年3月までに下部消化管穿孔の,術後当センターICUに入室した症例を対象とした。対象患者を75歳以上の高齢者群と75歳未満の非高齢者群の2群に分類し,凝固線溶系マーカー,急性期DICスコア,SOFAスコアをICU入室日のday 0からday 2まで,両群間で比較した。また,28日生存率を調べた。【結果】対象症例は46例(高齢者群23例,非高齢者群23例)であった。急性期DICスコアはday 0とday 1で高齢者群が非高齢者群より有意に高値であった(共にP<0.01)。さらに,SOFAスコアはday 1において高齢者群が有意に高値であった(P<0.05)。高齢者の28日生存率は両群間において有意差を認めなかった[65%(15/23)vs. 83%(19/23), P=0.18; log-rank test, P=0.17]。【結語】高齢者の下部消化管穿孔例は術後早期から凝固異常を合併しやすい。