日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
体外循環手術時の気管内出血における循環動態・酸素化能低下に対しnitric oxide(NO)吸入が著効した1例
平田 雄一郎田山 栄基植田 知宏内山 光恩塚 龍士古川 浩二郎森田 茂樹
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2020 年 27 巻 1 号 p. 32-36

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抄録

体外循環を行う手術における気管内出血は致命的となることがある。Nitric oxide(NO)吸入は,健常な肺胞の血管を選択的に拡張し,肺血管抵抗低下・換気血流比を改善し,酸素化の改善が期待される。症例は66歳の男性。胸部大動脈瘤に対し全弓部大動脈置換術を行った。人工心肺離脱直後に気管内チューブより多量の出血を認めた。右気管支からの出血であり,肺動脈カテーテルによる肺動脈損傷が疑われた。酸素化不良,血圧低下が持続したため,extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)管理下に集中治療室へ帰室した。酸素化能の改善に乏しく,術後3日目よりNO吸入を開始した。酸素化能の改善,肺動脈圧の低下を認め,ECMO離脱,人工呼吸器より離脱可能となった。NO吸入が気管内出血後の低酸素血症の改善に有効であった。

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