日本集中治療医学会雑誌
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27 巻, 1 号
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編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 宇都宮 明美
    2020 年 27 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    集中治療領域においては,近年post-intensive care syndrome(PICS)が着目され,ABCDEバンドルなどを中心とした積極的な介入が推奨されている。しかし,その介入は患者が主体的かつ積極的に取り組まなければ,その効果も十分でない。入院期間の短縮化により,術前からの全身状態の安定化や待機中の異常の早期発見,術後の早期リハビリテーションへの取り組みの教育は,入院前からの課題に移行している。身体的苦痛の最も強いICUでリハビリテーションに取り組むためには,患者のアドヒアランス状況を確認すること,アドヒアランス行動を促進することは重要であると考える。本稿ではICUへの入室が多い開心術患者を対象として,国内外の開心術患者の研究動向を概観し,アドヒアランスの概念の重要性と,周術期を術前からと捉えることの重要性,アドヒアランスを根底にした患者支援と今後の研究の必要性を検討する一助としたい。

原著
  • 細川 幸希, 加藤 里絵, 黒岩 政之, 小池 朋孝, 森安 恵実, 奥富 俊之, 新井 正康
    2020 年 27 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    【目的】産科患者における一般成人対象の北里大学病院Rapid Response System(KRRS)起動基準の有用性を後方視的に検証する。【方法】1年間の母体胎児ICU入室症例について診療録よりバイタルサインを抽出し,KRRS起動基準とmodified early obstetric warning system(MEOWS)起動基準において本研究で定義した重症判定の感度,特異度を算出比較した。【結果】重症判定の感度,特異度はKRRS基準では51%,74%,MEOWS基準では83%,79%だった。KRRS基準は妊娠高血圧症候群の見落としや,非重症例での基準抵触の傾向にあった。産科出血の検出においてはMEOWS基準に勝っていた。【結論】KRRS基準の有用性はMEOWS基準と比較して劣らなかった。産科患者への適用に際しては,産科患者の特性につき周知すべきである。

症例報告
  • 金澤 綾子, 内田 貴之, 相原 啓二, 蒲地 正幸
    2020 年 27 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,女性。腰椎固定術後,入院中にショックとなりICUに入室した。入室時は心拍数50 /minの高度徐脈,血圧測定不能の状態であった。採血上,イオン化マグネシウム(iMg2+)2.34 mmol/Lの高マグネシウム(Mg)血症を認め,これがショックの原因と考えられたことから,緊急血液透析を導入した。血中Mg濃度の低下とともに徐脈は改善し,ICU入室3日目にはショックを離脱した。本症例においてはICU入室25日前より麻痺性イレウスの診断で酸化Mg製剤の内服が開始された経緯があったが,血中Mg濃度は徐々に上昇したのではなく,ICU入室当日に急激に上昇していた。この急激な濃度上昇は,イレウスに伴って腸管粘膜からのMg吸収が亢進したためと推測された。酸化Mg製剤の投与に際しては,腸管からの吸収促進の病態がある場合には慎重に行う必要がある。

  • 佐藤 茜 , 幸野 真樹 , 速水 元 , 伊奈川 岳
    2020 年 27 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    ダビガトランなどの直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant, DOAC)はワルファリンに比べ,凝固モニタリングが必要なく,出血性合併症は減少するため,広く使用されている。しかし,頭蓋内などでの重篤な出血は依然致死的である。今回我々は,ダビガトラン常用中にくも膜下出血および脳内出血をきたし,ダビガトランの特異的拮抗薬であるイダルシズマブを緊急手術前に投与した症例を経験した。症例は76歳,女性。慢性心房細動に対しダビガトランを内服していた。意識障害にて救急搬送され,くも膜下出血および脳内出血と診断した。イダルシズマブ投与後,緊急開頭減圧術,破裂脳動脈瘤クリッピング術を行った。術中出血量を最小限にでき,術後合併症を認めなかった。DOAC内服患者の緊急手術は,止血コントロールに留意した術前準備が必要となる。特異的拮抗薬が使用可能になり,周術期管理の安全性は増したといえる。

  • 税田 紘輔, 佐藤 哲文, 松三 絢弥, 赤刎 真一, 劉 丹, 井上 哲, 塩路 直弘
    2020 年 27 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    下大静脈(inferior vena cava, IVC)フィルタ閉塞により緊急処置を要した報告は少ない。IVCフィルタ閉塞によるショックに対し,経カテーテル的血栓摘出術を行い,救命した一例を経験した。症例は54歳,白人男性。腰部悪性黒色腫に対する組織内照射目的で入院した。CTで指摘された下肢深部静脈血栓症・肺塞栓症再発に対し,抗凝固療法としてヘパリン投与を開始したが増悪があり,IVCフィルタを留置した。留置2日後にショックとなり,ICU入室となった。難治性ショックと画像所見からフィルタ閉塞を疑い,経カテーテル的血栓摘出術を施行し,IVC内に一部血流再開を確認した。その後,血行動態は徐々に改善した。血栓症と血小板減少からヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia, HIT)を疑い,ヘパリン投与を中止しアルガトロバン投与に変更した。血栓素因の検索の結果HITと診断され,ICU退室日まで抗凝固療法を継続した。IVCフィルタ留置患者のショックでは,フィルタ閉塞も原因として考慮する必要がある。

  • 平田 雄一郎, 田山 栄基, 植田 知宏, 内山 光, 恩塚 龍士, 古川 浩二郎, 森田 茂樹
    2020 年 27 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    体外循環を行う手術における気管内出血は致命的となることがある。Nitric oxide(NO)吸入は,健常な肺胞の血管を選択的に拡張し,肺血管抵抗低下・換気血流比を改善し,酸素化の改善が期待される。症例は66歳の男性。胸部大動脈瘤に対し全弓部大動脈置換術を行った。人工心肺離脱直後に気管内チューブより多量の出血を認めた。右気管支からの出血であり,肺動脈カテーテルによる肺動脈損傷が疑われた。酸素化不良,血圧低下が持続したため,extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)管理下に集中治療室へ帰室した。酸素化能の改善に乏しく,術後3日目よりNO吸入を開始した。酸素化能の改善,肺動脈圧の低下を認め,ECMO離脱,人工呼吸器より離脱可能となった。NO吸入が気管内出血後の低酸素血症の改善に有効であった。

短報
委員会報告
  • 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会
    2020 年 27 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    近年の集中治療期におけるリハビリテーション(以下,リハ)は「集中治療における早期リハビリテーション 〜根拠に基づくエキスパートコンセンサス〜」1)(以下,エキスパートコンセンサス)の公表,「早期離床・リハビリテーション加算」などにより,数年前と比べても大きく変化している。今回,われわれ集中治療早期リハビリテーション委員会では,現在の状況を把握する目的でアンケート調査を行った。また,数年後に訪れるエキスパートコンセンサスの改定を視野に入れ,エキスパートコンセンサスに関しても回答を依頼した。様々な回答から,集中治療期においてリハは治療の一つとして定着してきたことがわかったが,問題点や検討事項も認められた。

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