2021 年 28 巻 1 号 p. 3-7
【目的】経カテーテル的大動脈弁植え込み術(transcatheter aortic valve implantation, TAVI)後の合併症である急性腎傷害(acute kidney injury, AKI)は独立した予後規定因子であるが,リスク因子として確立されたものはない。また,動脈スティフネスと腎傷害との関連が注目されているが,これまでTAVI後のAKIとの関連についての報告はない。【方法】全身麻酔下にTAVIを施行された74例を対象に,AKI発症のリスク因子の検討を,動脈スティフネスの指標として,末梢脈圧(peripheral pulse pressure, pPP)を含めて後方視的に行った。【結果】AKIは33例(44.6%)で発症し,発症例では有意にICU滞在日数,入院期間が延長し(P<0.001),1年死亡率が上昇した(P=0.015)。リスク因子の検討では,経心尖部アプローチ(OR: 13.1,95%CI: 3.34〜50.9)とpPP上昇(OR: 1.09,95%CI: 1.04〜1.13)が有意であった。【結論】脈圧上昇はTAVI後AKI発症のリスク因子である。