日本集中治療医学会雑誌
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28 巻, 1 号
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編集委員会より
原著
  • 皆川 陽子, 木村 素子, 楠 淑, 入江 洋正, 大竹 孝尚, 山下 茂樹
    2021 年 28 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    【目的】経カテーテル的大動脈弁植え込み術(transcatheter aortic valve implantation, TAVI)後の合併症である急性腎傷害(acute kidney injury, AKI)は独立した予後規定因子であるが,リスク因子として確立されたものはない。また,動脈スティフネスと腎傷害との関連が注目されているが,これまでTAVI後のAKIとの関連についての報告はない。【方法】全身麻酔下にTAVIを施行された74例を対象に,AKI発症のリスク因子の検討を,動脈スティフネスの指標として,末梢脈圧(peripheral pulse pressure, pPP)を含めて後方視的に行った。【結果】AKIは33例(44.6%)で発症し,発症例では有意にICU滞在日数,入院期間が延長し(P<0.001),1年死亡率が上昇した(P=0.015)。リスク因子の検討では,経心尖部アプローチ(OR: 13.1,95%CI: 3.34〜50.9)とpPP上昇(OR: 1.09,95%CI: 1.04〜1.13)が有意であった。【結論】脈圧上昇はTAVI後AKI発症のリスク因子である。

  • 笠原 聡子, 梅原 美香, 吉田 正隆
    2021 年 28 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    【目的】ニカルジピン塩酸塩の持続点滴治療を要する患者における静脈炎の発症要因を明らかにする。【方法】2017年5月から2018年12月にICUで末梢静脈からニカルジピン塩酸塩を持続点滴投与された患者118名(173カテーテル)について,後ろ向きに検討した。静脈炎の危険因子を多重ロジスティック回帰分析により特定し,ROC分析によりカットオフ値を求めた。【結果】静脈炎の発症率は19.7%であった。血清アルブミン値(オッズ比0.32,95%CI 0.14〜0.71, P=0.006)と投与速度の時間加重平均(オッズ比1.27,95%CI 1.10〜1.47,P=0.001)は静脈炎発症の有意な危険因子であり,投与時間(オッズ比1.02,95%CI 1.00〜1.04,P=0.057)の関連傾向もみられた。カットオフ値は,血清アルブミン値が3.3 g/dL,投与速度が4.1 mg/hr,投与時間が22.7 hrであった。【結論】血清アルブミン値が3.3 g/dL以下,投与速度が4.1 mg/hr以上,投与時間が22.7 hr以上の患者で静脈炎の発症リスクが高かった。

症例報告
  • 内村 修二, 谷口 正彦, 長嶺 佳弘, 青山 剛士, 長濵 真澄, 與那覇 哲, 矢野 武志, 恒吉 勇男
    2021 年 28 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    Fontan術後の患者は,体静脈血が肺動脈へ直接還流する特異的な血行動態を有しており,呼吸循環管理に難渋することが多い。今回,呼吸不全を発症したFontan術後鋳型気管支炎の小児に対し,気管挿管後に陽圧換気を導入した結果,循環動態が破綻した症例を経験した。症例は7歳,男児。鋳型気管支炎を発症後,酸素化が悪化したため,呼吸管理目的にICUへ入室した。気管挿管し,陽圧換気を行ったが,直後より循環動態が破綻した。静脈−静脈膜型人工肺を導入し,酸素化の改善が得られた後,気管支鏡による粘液栓除去術を行った。その後,可能な限り気道内圧を下げた人工呼吸器管理を行い,中心静脈圧を指標に輸液管理を行った。Fontan循環を有する患者では,通常行われる治療介入により循環動態が破綻する危険性がある。手術成績の向上によりFontan循環を有する患者は増加しており,その特異的な血行動態について理解しておく必要がある。

短報
委員会報告
  • 日本集中治療医学会薬事・規格・安全対策委員会
    2021 年 28 巻 1 号 p. 29-59
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    2007年に厚生労働省は,「集中治療室(ICU)における安全管理指針」を公表した。公表から10年以上が経過し,その間に医療情報システムの目覚ましい進歩や多職種連携の推進など,医療制度を取り巻く環境も大きく変化した。そのため現状に合った安全管理指針を作成することが必要である。日本集中治療医学会薬事・規格・安全対策委員会では,集中治療室における安全管理指針作成ワーキンググループを立ち上げ,「日本集中治療医学会 集中治療室における安全管理指針」を作成した。本指針は,日本集中治療医学会集中治療専門医研修施設としての施設基準を満たしている集中治療室を対象とし,集中治療室における医療事故を防止して,医療の質の向上と安全性を確保することを目的としている。本指針が,臨床の現場で適切に活用されることを期待している。

  • 日本集中治療医学会感染管理委員会
    2021 年 28 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    重症患者や腎代替療法を取り扱うICUにおける抗菌薬適正使用は特に重要であり,抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship, AS)活動の推進が要求される。ICUにおいては,一般病棟とは別に抗菌薬使用状況調査が必要であり,AS活動の指標となるベンチマークの設定も望まれるが,日本においてそのような報告はない。そこで,多施設のICUにおける2017および2018年度の注射用抗菌薬の使用日数(days of therapy, DOT)による調査とAS活動に関するアンケート調査を実施した。参加施設は48ユニット(43施設)で,DOTs/100患者日は98.8,中央値97.5[四分位範囲(interquartile range, IQR)76.5〜114.3]であった。各抗菌薬別使用量は,カルバペネム系薬は中央値14.7(IQR 11.0〜19.5),タゾバクタム/ピペラシリン9.2(IQR 5.5〜12.5),抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬8.3(IQR 6.4〜13.3)であった。ASチームのICUへの介入は,ほぼ毎日が41.7%,介入タイミングは抗菌薬投与開始後が62.5%であり,改善の余地がある。本調査で得たデータは,日本のICUにおけるベンチマークとして活用できると考える。

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