2021 年 28 巻 3 号 p. 173-179
要約:心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide, ANP)は,心不全治療や心臓手術周術期など様々な場面での臨床効果を検討されてきたが,現在でも定まったエビデンスは得られていない。一方で,ANPには血管透過性を制御する作用があることはあまり知られていない。ANPによる体液量および心前負荷の調節には,利尿作用,血管拡張作用とともに,血管透過性亢進作用が強く関与していることが示されている。さらに,ANPには傷害された血管内皮細胞の透過性亢進を抑制する作用も報告されている。これらに加えて,近年,ANP が血管内皮上に存在するグリコカリックスを傷害する因子であることが疑われている。このように,ANPは血管内皮細胞やグリコカリックスに影響を与え,生体内での血管透過性の制御を担う重要な役割を持つ可能性がある。