日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
ショックの鑑別,病態把握に苦慮したpheochromocytoma multisystem crisisの一例
木村 友則湯澤 紘子小口 萌森戸 知宏淺木 弓英貞広 智仁
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2021 年 28 巻 6 号 p. 537-541

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抄録

症例は22歳,女性。左副腎腫瘍の腫瘍内出血と重度のショック,意識障害で当院へ紹介された。ショックをきたす様々な疾患を鑑別しつつ,大量輸液,カテコラミンの持続投与,人工呼吸管理,ステロイドの補充などの全身管理を行った。状態は数日で安定したが,軽度の刺激で血圧の急上昇を認めたため褐色細胞腫による高血圧クリーゼを疑い,αおよびβ遮断薬の投与を開始したところ循環動態は徐々に安定し,pheochromocytoma multisystem crisis(PMC)の診断に至った。循環動態を安定化させ,周術期合併症のリスクを減らした状態まで全身状態を改善させ,第62病日に後腹腔鏡補助下副腎摘出術を行い独歩退院した。本症例はショックの鑑別,病態の把握および診断に苦慮した。PMCは非常に稀な病態であるが,集中治療医は致死率の高い内分泌疾患としてその病態を理解しておく必要がある。また,刻々と変化する患者の状態を把握,治療しながらバイタルサインの変化を見逃さず診断につなげることが重要である。

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© 2021 日本集中治療医学会
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