日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
COVID-19肺炎による重症急性呼吸窮迫症候群に対し気道閉塞圧を指標に筋弛緩薬を長期間投与し肺保護を行った一例
喜久山 和貴丸尾 寛子市川 ゆき渡辺 太郎大杉 浩一庄野 敦子木村 友之小谷 透
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 29 巻 3 号 p. 211-215

詳細
抄録

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるARDSの治療では,有効な薬物療法はない。人工呼吸器関連や傷害性自発呼吸による肺損傷回避のための肺保護戦略がARDSへの主な治療手段となるが,肺保護のための筋弛緩薬の投与方法は未だ定まっていない。 COVID-19によるARDSの診断で60歳代男性が当院に紹介され,入院2日目に体外式膜型人工肺と腹臥位療法を肺保護のために導入した。深鎮静下でも強い吸気努力を認め,肺損傷のリスク軽減のために筋弛緩薬を持続投与した。身体所見と気道閉塞圧(P0.1)を指標に筋弛緩の必要性を連日評価した。肺機能は緩徐に改善して吸気努力も減少し,最終的には腹臥位療法19日間,持続筋弛緩薬投与26日間を要した。入院47日目に体外式膜型人工肺から離脱した。ICUと一般病棟に滞在後,酸素投与下で自宅退院した。今後発生しうる同様の重症例に備えるため,P0.1が筋弛緩薬投与期間を決める一指標となりうる可能性につき文献的考察を交え症例を報告する。

著者関連情報
© 2022 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top