日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
たこつぼ心筋障害を合併し集中治療を要したstiff-person症候群の一例
市川 優美荒巻 裕斗福島 一憲一色 雄太澤田 悠輔中島 潤大嶋 清宏
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2022 年 29 巻 3 号 p. 224-228

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抄録

【症例】甲状腺機能亢進症,抗リン脂質抗体症候群の既往がある50歳代女性。右大腿部の有痛性筋痙攣を主訴に当院へ搬送された。主訴のため歩行不可であり,筋痙攣に対する不安を訴えていた。第5病日,たこつぼ心筋障害が疑われる急性心不全を発症しICUに入室した。 プロポフォールで鎮静し人工呼吸器管理を行い,さらにジアゼパムを投与したところ筋痙攣は消失傾向となり,その後抜管,ICUを退室した。臨床所見,血液中の抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)が強陽性であったことからstiff-person症候群(SPS)と診断した。【考察】SPSは抗GAD抗体による自己免疫異常により発症し得る神経疾患で,筋硬直と筋痙攣を特徴とする稀な難治性疾患である。本症例ではSPSの抗GAD抗体による交感神経の過剰興奮状態と不安恐怖による精神的ストレスのためたこつぼ心筋障害をきたしたと考えられ,適切な診断と集中治療で良好な転帰を得た。

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© 2022 日本集中治療医学会
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