2022 年 29 巻 4 号 p. 275-279
進行性の高度気道狭窄患者の救命のためには,迅速な気道ステント留置は一つの選択肢となる。症例は70歳代,男性。後縦隔腫瘍により気管が圧迫されたため高度気道狭窄を来たし救急搬送された。救急担当内科医から集中治療医に呼吸管理が依頼されたが, CTにより狭窄部位から気管挿管では対処できないと判断し,呼吸器内科医,心臓血管外科医,臨床工学技士,集中治療室看護師とのミーティングの後,直ちに大腿静脈脱血–内頸静脈送血のVV-ECMOを開始した。気道ステント挿入の準備が整った後,手術室に移動しステント挿入術を実施した。術中はECMO流量を調節しながら酸素化を維持することで,気管挿管を実施することなく,全身麻酔と筋弛緩薬使用下に安全に気道ステントを留置することができた。 手術終了後に気管挿管を行い,十分な換気が可能であることを確認しECMOを離脱した。翌朝には人工呼吸器から離脱し,抜管が可能であった。多職種が協働して迅速な意思決定ができる専門性の高いチームであることが重要である。