日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
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ISSN-L : 1340-7988
29 巻, 4 号
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編集委員会より
今号のハイライト
症例報告
  • 金子 尚樹, 西澤 英雄, 藤本 潤一, 七尾 大観 , 木村 康宏, 大和田 玄, 森村 太一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年29 巻4 号 p. 271-274
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    低カリウム血症では近位尿細管でのアンモニア産生が増加するため,肝性脳症患者では高アンモニア血症の増悪因子となり得る。ただし,肝不全や門脈体循環シャントがないにもかかわらず低カリウム血症により高アンモニア血症をきたした報告例は非常にまれである。本症例は77歳の脂肪肝患者で,常用薬であった芍薬甘草湯の偽性アルドステロン症による低カリウム血症と,意識障害を伴う高アンモニア血症を認めたが,血清カリウム値の上昇に伴い高アンモニア血症と意識障害も改善した。①低カリウム血症による近位尿細管でのアンモニア産生増加や,②アルカローシスによるアンモニアの血中への移行増加,③慢性低カリウム血症による尿素合成能低下や④脂肪肝による尿素合成能低下によって高アンモニア血症をきたしたと考えられた。したがって,肝機能障害の程度にかかわらず,低カリウム血症と意識障害を認めた際は高アンモニア血症を鑑別する必要がある。

  • 川口 勝久, 道田 将章, 池本 直人, 吉田 悠紀子, 日根野谷 一, 林 真雄, 大橋 一郎, 片山 浩
    原稿種別: 症例報告
    2022 年29 巻4 号 p. 275-279
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    進行性の高度気道狭窄患者の救命のためには,迅速な気道ステント留置は一つの選択肢となる。症例は70歳代,男性。後縦隔腫瘍により気管が圧迫されたため高度気道狭窄を来たし救急搬送された。救急担当内科医から集中治療医に呼吸管理が依頼されたが, CTにより狭窄部位から気管挿管では対処できないと判断し,呼吸器内科医,心臓血管外科医,臨床工学技士,集中治療室看護師とのミーティングの後,直ちに大腿静脈脱血–内頸静脈送血のVV-ECMOを開始した。気道ステント挿入の準備が整った後,手術室に移動しステント挿入術を実施した。術中はECMO流量を調節しながら酸素化を維持することで,気管挿管を実施することなく,全身麻酔と筋弛緩薬使用下に安全に気道ステントを留置することができた。 手術終了後に気管挿管を行い,十分な換気が可能であることを確認しECMOを離脱した。翌朝には人工呼吸器から離脱し,抜管が可能であった。多職種が協働して迅速な意思決定ができる専門性の高いチームであることが重要である。

  • 戸田 美希, 本山 泰士, 内山 福美 , 江木 盛時, 溝渕 知司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年29 巻4 号 p. 280-283
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー

    欧州旅行中にギランバレー症候群を発症し人工呼吸管理を要する患者が,本邦での治療を希望し,ICUに入室した。入室時,デクスメデトミジン1.9 μg/kg/hr,ミダゾラム0.9 mg/kg/hr,プロポフォール1.3 mg/kg/hr,レミフェンタニル0.27 μg/kg/min,プレガバリン300 mg/day,クエチアピン300 mg/day,トラゾドン150 mg/dayが投与されていた。これらの薬剤の中止,減量に伴い,激しい体動,頻呼吸などの症状を呈し,当科が集中治療管理を依頼された。デクスメデトミジン,プロポフォール,ミダゾラムの静脈投与でも良好な鎮静が得られなかったため,ケタミン50 mg単回投与の後に,ケタミン0.53 mg/kg/hrで持続投与を開始したところ,良好な鎮静状態が得られた。離脱症候群を疑い,ケタミン持続投与下にフェンタニルの投与を開始,ミダゾラムの持続投与を再開,デクスメデトミジンの持続投与を増量し,各薬剤を漸減中止した。入院15日目に一般病棟へ転棟,入院47日目にリハビリテーション目的に転院となった。

短報
レター
委員会報告
  • 一般社団法人日本集中治療医学会/一般社団法人日本呼吸器学会/ 一般社団法人日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会
    原稿種別: 会議報告
    2022 年29 巻4 号 p. 295-332
    発行日: 2022/07/01
    公開日: 2022/07/22
    ジャーナル フリー

    日本集中治療医学会/日本呼吸器学会/日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会は,今回,合同で『ARDS診療ガイドライン2021』を作成した。2016年版の診療ガイドラインでは,成人のみを対象とした臨床課題(clinical question: CQ)を取り上げたが,今回は成人の46のCQに加えて小児を対象とした15のCQも作成した。前回と同様,GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを用いた推奨度決定の手法を用いた。また,新たな手法として診断精度のメタ解析およびネットワークメタ解析を用いたシステマティックレビュー(systematic review: SR)も行った。これらにより,より充実した信頼性の高い実用的な診療ガイドラインを作成することができた。

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