日本集中治療医学会雑誌
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委員会報告
災害時の多数傷病者発生に対するICU体制:新型コロナウイルス感染症第5波中に開催された東京オリンピック・パラリンピック前後のアンケート調査
日本集中治療医学会危機管理委員会
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2023 年 30 巻 3 号 p. 191-201

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抄録

多発する自然災害や新型コロナウイルス感染症の流行により,多数の重症患者が同時に発生する危険性が高まっている。日本集中治療医学会の危機管理委員会は,ICUの災害対応の指針とするべく「災害時の集中治療室 日頃の準備から発災後まで─ICU対応ガイダンス」を2020年に発刊した。しかし,本邦のICUでの災害準備体制や,実際の多数患者発生時の対応状況は明らかでない。今回我々は,本邦のICUでの災害に対する準備状況や,東京オリンピック・パラリンピック期間中の新型コロナウイルス感染症による多数患者発生時に全国のICU が行った対応を調査するために,アンケート調査を行った。その結果,災害準備としての,段階的なサージ・キャパシティの設定,ICU拡張や複数ICUの統合運用の計画,災害時のICU 入退室基準の設定,ICU以外の職員の応援体制の確立など,多くの項目で不十分である現状が明らかになった。さらに,多数患者発生時の,ICU拡張や統合運用,入退室基準の変更などの施行率は低く,柔軟な対応の難しさと,事前準備の重要性が改めて示唆された。

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