2024 年 31 巻 3 号 p. 188-193
集中治療の進歩により,重症患者の救命率は劇的に向上したが,集中治療後の患者における長期的なQOL低下が新たな課題になっている。慢性痛は頻度の高い愁訴であり,慢性痛患者のQOLは低い。疼痛はその機序に従い,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛に分類される。ICUを退室した患者の約半数は慢性的な痛みを自覚し,そのうち半数が集中治療に関連した慢性痛を発症している。集中治療後慢性痛患者の多くは中等度以上の痛みを自覚し,日常の活動が制限されている。慢性痛には機序に応じた治療が原則であり,集中治療後慢性痛においても同様である。適切な予防法のためには,集中治療後慢性痛の原因を特定することが必要であるが,集中治療後症候群の関連因子が集中治療後慢性痛にも関与する可能性があり,その予防策は集中治療後慢性痛の予防にもつながる可能性がある。