日本集中治療医学会雑誌
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最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
編集委員会より
2023年度論文賞受賞者のことば
学会創立50周年記念特集
  • 氏家 良人
    原稿種別: 総説
    2024 年 31 巻 3 号 p. 187
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー
  • 天谷 文昌
    原稿種別: 総説
    2024 年 31 巻 3 号 p. 188-193
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    集中治療の進歩により,重症患者の救命率は劇的に向上したが,集中治療後の患者における長期的なQOL低下が新たな課題になっている。慢性痛は頻度の高い愁訴であり,慢性痛患者のQOLは低い。疼痛はその機序に従い,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛に分類される。ICUを退室した患者の約半数は慢性的な痛みを自覚し,そのうち半数が集中治療に関連した慢性痛を発症している。集中治療後慢性痛患者の多くは中等度以上の痛みを自覚し,日常の活動が制限されている。慢性痛には機序に応じた治療が原則であり,集中治療後慢性痛においても同様である。適切な予防法のためには,集中治療後慢性痛の原因を特定することが必要であるが,集中治療後症候群の関連因子が集中治療後慢性痛にも関与する可能性があり,その予防策は集中治療後慢性痛の予防にもつながる可能性がある。

総説
  • 羽田 佑, 一二三 亨, 福嶌 教偉
    原稿種別: 総説
    2024 年 31 巻 3 号 p. 195-202
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    治療抵抗性重症心不全は予後不良であり,その克服は我々の課題である。昨今,重症心不全に対する治療法は心臓移植と補助人工心臓治療の発展により,劇的に変化している。 特に補助人工心臓については,その性能が向上し,転帰改善に寄与している。また,これまで植込型補助人工心臓は,本邦では心臓移植を前提とする患者にしか適応がなかったが,2021年5月からdestination therapy(DT)として,心臓移植適応のない患者に対しても,一定の条件を満たせば保険適用となった。そのため,今後,集中治療専門医は重症心不全患者管理中に,その先の治療選択肢として,補助人工心臓への移行の是非を判断できるよう,その適応や手順について理解しておく必要がある。そして,循環器内科と協力し,タイミングを逸さずに心臓移植実施施設あるいはDT施設への相談・転院を検討することが重要である。さらに,今後患者数の増加が予測されており,植込型LVADの仕組みや急変時の対応についても理解を深めておく必要がある。

原著
  • 大野 美香, 本荘 弥生, 永登 諒, 平敷 好史, 池口 修平, 神津 玲, 嶋田 正子, 渡辺 伸一
    2024 年 31 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    【目的】ICUに入室した患者の家族における退院後の精神症状発生に関連する要因を探索する。【方法】本研究は本解析に対して事後に実施された症例対照研究である。対象は,ICU に48時間以上滞在し退院した患者と,その患者がICU滞在中に1回以上面会した家族である。 患者データを,家族に精神症状あり〔Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)不安≧8,HADS抑うつ≧8,impact of event scale-revised(IES-R)≧25のうち少なくとも1つを認めた場合〕群となし群に分け,家族の精神症状発生に関連する要因を検討した。【結果】生存退院した患者178人中,退院3ヶ月後調査を完了した患者の家族61人を解析した。家族の精神症状ありは20人(33%)であった。単変量解析において,家族の精神症状ありと患者の退院時Barthel Index(P=0.013)およびHADSによる抑うつ(P=0.010)とが有意に関連していた。しかし,多変量解析では,有意な関連因子が存在しなかった。【結論】患者の退院時の日常生活動作の自立度低下と精神症状が,退院3ヶ月後の家族の精神症状発生に関連している可能性がある。

症例報告
  • 日比 大亮, 田中 健雄, 毛利 英之, 余川 順一郎, 佐藤 康次, 谷口 巧
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 31 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    患者は70歳,男性。69歳時に慢性リンパ性白血病と診断され,経過観察となっていた。 経過中,活動性病変に対しイブルチニブ投与が開始された。しかし,肝機能障害により1ヶ月後に投与中止となった。末梢血液像からは,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫が疑われた。 イブルチニブ投与中止4日後に,低血糖を伴う乳酸アシドーシスを認めたためICU入室となった。人工呼吸管理や血糖補正,フルスルチアミン投与,血液浄化療法などで改善がみられず,ワールブルグ効果によるB型乳酸アシドーシスと考えられた。原疾患への介入が必要と判断し,同日中にminiCHOP療法(cyclophosphamide, doxorubicin hydrochloride, vincristine, prednisolone)を開始した。翌日には乳酸値が改善し,末梢血中の腫瘍細胞の減少も確認できた。 乳酸アシドーシスを伴う悪性腫瘍患者では全身状態が悪く,化学療法の開始がためらわれる場合も多いが,早期の化学療法開始が有効となる可能性を考慮すべきである。

短報
委員会報告
  • 一般社団法人日本集中治療医学会/一般社団法人日本呼吸器学会/一般社団法人日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン2021作成委員会
    2024 年 31 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    【背景】診療ガイドラインは,エビデンスを要約し,医療の提供者,利用者(患者,および家族などの支援者)の意思決定に資するものである。しかし,その内容は専門的で,医療の専門家ではない一般市民が利用するのは容易ではない。ARDS診療ガイドライン2021作成委員会(以下,本作成委員会)では,一般の人々にとってARDSの病態や診療の理解を促進することが診療ガイドラインの活用の点で重要と考え,一般市民を対象に,平易で理解しやすくかつ実用的な「ARDS診療ガイドライン2021」(以下,診療ガイドライン2021)の解説を作成し,本診療ガイドラインの付録として「ARDSの診療をご理解いただくために 〜患者さん,ご家族の方,一般の方向け『ARDS 診療ガイドライン2021』の解説〜」(以下,一般の方向け解説)を公開した。本委員会報告では,解説の作成経緯や過程について概説することとした。【内容】一般の方向け解説は,本作成委員会一般の方向け解説作成担当班(以下,本作成班)によって作成された。本作成班は多様な職種,専門からなるメンバーを含んでいる。Guideline International Networkの実践的なガイダンスを参照しながら,平易な文章とイラストを用いてARDSの病態の総論,診療ガイドライン2021の推奨事項などを4つの項目に分けて解説した。また,療養中に患者や家族が必要とする可能性のある情報について,7項目からなるコラムを作成した。作成された一般の方向け解説の全文は,診療ガイドライン2021の付録として各学会のホームページからアクセス可能である。【結語】本委員会報告では,診療ガイドライン2021の付録である一般の方向け解説の意図,過程について紹介した。本解説がARDS診療に関わる医療の提供者および患者や支援者(家族など)などの医療の利用者に広く認識され,コミュニケーションツールとして広く使われ,意思決定の助けとなることを期待する。

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