日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
高度の乳酸アシドーシスを呈したためにICUで早期に化学療法を導入したびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の1例
日比 大亮田中 健雄毛利 英之余川 順一郎佐藤 康次谷口 巧
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2024 年 31 巻 3 号 p. 209-212

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抄録

患者は70歳,男性。69歳時に慢性リンパ性白血病と診断され,経過観察となっていた。 経過中,活動性病変に対しイブルチニブ投与が開始された。しかし,肝機能障害により1ヶ月後に投与中止となった。末梢血液像からは,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫が疑われた。 イブルチニブ投与中止4日後に,低血糖を伴う乳酸アシドーシスを認めたためICU入室となった。人工呼吸管理や血糖補正,フルスルチアミン投与,血液浄化療法などで改善がみられず,ワールブルグ効果によるB型乳酸アシドーシスと考えられた。原疾患への介入が必要と判断し,同日中にminiCHOP療法(cyclophosphamide, doxorubicin hydrochloride, vincristine, prednisolone)を開始した。翌日には乳酸値が改善し,末梢血中の腫瘍細胞の減少も確認できた。 乳酸アシドーシスを伴う悪性腫瘍患者では全身状態が悪く,化学療法の開始がためらわれる場合も多いが,早期の化学療法開始が有効となる可能性を考慮すべきである。

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