抄録
急性心筋梗塞症は発症早期の急死例が多く,それが臨床上の最大の問題である。急性心筋梗塞症の致命率はおよそ40%と推定されている。一方,CCU治療が進歩して院内死亡率は10%前後に減少した。しかし,心筋梗塞症の死亡例の多くが病院到着前の急死例であり,初期治療を受けることなく命を落としているものが圧倒的に多いという現状が目前にある。近年,急性心筋梗塞症の治療を論じるとき,再疎通療法の有用性について議論が賑やかである反面,治療上の最大の難点である発症直後の急死に目を向け,その対策を真剣に追求しようとするものが少ない。また,本邦には悉皆性の高い大規模な疫学的調査がなく,心筋梗塞発症率が明らかにされていない。発症者全体を視野に入れた救命対策が行われていないことの一因と考えられる。この現状を直視し,具体的な対策を急ぐべき時である。本論文の内容は第20回日本集中治療医学会総会のパネルディスカッション「急性心筋梗塞症の早期収容体制の現状と問題点と対策」(座長:柴田淳一,平盛勝彦)のなかで討論されたものである。そこで明らかにされたわが国における心筋梗塞症患者の早期収容体制の現況と問題点について記す。