2004 年 11 巻 4 号 p. 433-437
血球貪食症候群(HPS)は,骨髄などでの組織球の増殖と血球貪食を特徴とし,高熱,汎血球減少,肝機能障害,DIC (disseminated intravascular coagulation)など多彩な臨床症状を呈する疾患である。今回サイトメガロウイルス(CMV)感染を契機にHPSを発症した慢性関節リウマチ(RA)患者の1症例を経験した。患者は75歳の女性。15年前にRAと診断され,今回環軸椎亜脱臼に対する手術目的で入院した。入院中突然高熱と下痢が出現した。汎血球減少を認めたため骨髄穿刺検査を行ったところ,骨髄は低形成で組織球による血球貪食像を認めHPSと診断した。劇症型HPSと考えられステロイドパルス療法に引き続きステロイド大量療法を行ったが,HPSは改善しなかった。そこでエトポシド投与を開始したが,投与開始3日目に急性肺血栓塞栓症により死亡した。本症例におけるHPSの原因として,ステロイド長期使用による細菌・真菌の日和見感染を疑ったが,病理解剖の結果CMV感染が強く関与していたことが判明した。