日本集中治療医学会雑誌
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ARDSの病態解明と新規治療法の確立のための実験的アプローチ
田坂 定智石坂 彰敏
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2005 年 12 巻 2 号 p. 97-103

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抄録
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は肺の急性炎症とそれに伴う肺微小血管の透過性亢進を特徴とする。我々はARDSの発症メカニズムに関して検討を重ね,また各種阻害薬などを用いて新規治療法の確立についての試みも行ってきた。ARDSの原因物質であるエンドトキシンの認識機構に関与するCD14 (cluster of differentiation 14), Toll-like receptor 4の阻害によって,実験的急性肺損傷の減弱を認めた。またエンドトキシンの生物活性の中心であるlipid Aのアナログがエンドトキシンに対して拮抗的に作用し,ARDSの治療薬となる可能性を示した。ARDSでは好中球が中心的役割を果たすが,我々は活性化された単核球系貧食細胞もサイトカインの産生などを介して,ARDSの発症に一定の役割を果たすことを示した。TNF-α (tumor necrosis factor α)の遊離を抑制するTACE (tumor necrosis factor-converting enzyme)阻害薬や好中球エラスターゼ阻害薬などが実験的肺損傷を改善し,後者についてはその後臨床薬として上市された。
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