抄録
生体内に大量にあるアミノ酸L-アルギニンを基質として合成される一酸化窒素(NO)は,血管内皮細胞のみならず血管平滑筋や心筋組織でも産生される。NOは強力な血管弛緩作用,抗血小板凝集作用,抗平滑筋増殖作用や陰性変力作用を持つ。そのため,動脈硬化症,狭心症,心筋梗塞症,慢性心不全や敗血症性ショックなどの心血管系疾患の病態理解や新たな治療法の展開に重要な因子と考えられる。本稿では,NOが動脈硬化症を含めた循環器疾患の臨床を考える上で,どのような意義があるかを,最新の情報とともに,われわれの研究結果を含めて概説した。