日本集中治療医学会雑誌
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松本サリン中毒,病院受診者の調査結果
急性期の検討を中心に
平林 秀光清水 幹夫森田 洋柳澤 信夫三村 昭平
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1997 年 4 巻 4 号 p. 363-370

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抄録

1994年6月27日深夜,松本市内の住宅街でサリン中毒患者が発生し,現場で5名の死亡が確認され,市内病院受診者の総数は264名(病院死亡2名)に及んだ。われわれは,264名の患者について初診時の臨床データおよび4か月後の症状について検討した。発症当初の血漿(偽性)コリンエステラーゼ(pseudo cholinesterase; ChE)値低下例は23.9%(53/222例)で,このうち20例は高度低下例であった。縮瞳は69.4%(152/219例)に認あられた。縮瞳の程度とChE値の問に有意な相関が認められたが,顕著な縮瞳を認めた症例でChE値が正常域であった症例も多く,眼球結膜への局所作用と考えられた。血液化学検査に関しては血清クレアチンキナーゼ(serum creatine kinase; CK)値上昇,白血球数増加,血清カリウム(値)低下,血清クロール(値)低下を示した症例でそれぞれ有意にChE値が低下していた。4か月後の調査では依然「眼の疲れ」,「眩しさ」などの眼症状や全身倦怠感,微熱などを訴えており,今後も経過観察が必要であることを確認した。

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