抄録
肺動脈カテーテルにより多くの疾患の病態生理が解明されたが,カテーテルから正しいデータを得て,病態の理解,治療に応用するには以下の考慮が必要である。肺動脈圧,肺動脈楔入圧は,トランスデューサの位置,周波数特性によるアーチファクトを除外し,呼気時の安定した値を読みとらねばならない。冷水ボーラス注入法による心拍出量は,数回の1回拍出量の平均値であり,1分間の平均的心拍出量ではない。一定の呼吸相で冷水を注入することにより安定した値を得ることができるが,真の平均的心拍出量とはいいがたい。持続心拍出量測定装置は,約10分間の平均的心拍出量であり,速い変化には追従できないが,ボーラス注入法による欠点を補うことができ,精度の向上が期待できる。右心カテーテリゼーションの特質をいかして,右室駆出率,混合静脈血ヘモグロビン酸素飽和度測定ができるカテーテルも開発され,臨床応用されている。厳密な肺動脈カテーテルの適応基準はないが,このカテーテルを十分に活用できるか否かは,使用者のより良い理解と利用にかかっている。