抄録
脳微小循環系と脳波に対するプロポフォールの用量依存的な影響を調べた.対象は成猫7匹で,左側頭頭頂部に作成した骨窓(cranial window)より脳軟膜動脈血管径を,頭蓋に植え込んだ電極より皮質脳波を測定した.皮質脳波は,コントロール時の速波からプロポフォーニル投与量を増加するに従って,速波と徐波の混合(5mg・kg-1・hr-1),高振幅徐波(10mg・kg-1・hr-1),群発抑制または平坦脳波(20mg・kg-1・hr-1),平坦脳波(30mg・kg-1・hr-1)へと変化した.プロポフォール投与中の血管径は,投与量が5,10,20mg・kg-1・hr-1まではコントロールに比較して有意に減少した.20mg・kg-1・hr-1から30mg・kg-1・hr-1への増量では7匹中4匹で血管径は拡張した.今回観察された脳軟膜動脈血管径の変動は脳代謝抑制に伴う2次性の血管収縮とプロポフォールによる直接的な血管拡張作用の両方の影響により生じたものと考えられた.