抄録
心拍出量を維持した脳低温療法の外傷性脳損傷(TBI)に対する効果を検討した。対象は,連続した低温療法施行31例(hypothermia群)と,他の治療は同様で連続した常温管理群13例(normothermia群)である。低温療法の適応は,来院時Glasgow Coma Scale (GCS)8点以下でCT所見陽性例。両群間に,年齢,性別,来院時GCSなどに差はなかった。低体温群では,3~4日間内頸静脈温を32~33℃台に調節した。低温療法中の循環抑制に対しては,膠質液負荷と,ドブタミン投与を行った。Hypothermia群では,低体温期の心係数は,normothermia群の入院3日間のそれと差がなかった。心係数の維持とともに内頸静脈酸素飽和度は上昇したが,脳圧は逆に低下した。TBIの予後良好例は,hypothermia群で71%(31例中22例),normothermia群で31%(13例中4例)であった(Chi-Square test, P<0.05)。我々の心拍出量を維持した脳低温療法はTBIの予後を改善した。