抄録
侵襲時に発現する熱ショック蛋白(heat shock protein, HSP70)に注目し,敗血症による小腸のHSP70誘導とHSP70による敗血症性小腸組織傷害の軽減を検討した。ラット盲腸結紮穿刺(CLP)腹膜炎モデルを用い,36時間後に犠死せしめ抗HSP70抗体を用いて免疫組織染色を行った。さらに温熱曝露(heat stress, HS)または亜ヒ酸ナトリウム(sodium arsenite, SA)を与えた後にCLPを行ったHS-CLP群,SA-CLP群の小腸組織傷害の程度をCLP群と比較した。CLPによって小腸絨毛先端にHSP70が強く誘導された。小腸にHSP70を発現させる至適なHSは42℃15分間,SAの投与量は6mg・kg-1であった。HS-CLP群,SA-CLP群はCLP群と比較して,小腸傷害が軽減された(P<0.05)。ラット腹膜炎敗血症の際に小腸にHSP70が発現し,またHSP70の前誘導により小腸組織傷害が軽減され,敗血症治療の検討課題となりうることが示唆された。