日本集中治療医学会雑誌
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ラットのセルレイン誘発急性膵炎にNFκB decoyが有効か
大家 宗彦丸川 征四郎井上 貴至細原 勝士上野 直子久保山 一敏
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2001 年 8 巻 4 号 p. 361-363

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抄録
有効な治療法がない疾患に対して,遺伝子組み込み治療や,アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療が研究され,一部はすでに臨床治験が行われている。救急集中治療でしばしば経験する急性重症膵炎は有効な治療法のない予後不良な疾患の1つである。そこで,試験的研究としてラット急性膵炎モデルを用いて遺伝子治療の有効性を検討した。Sprague-Dawleyラット11匹を対象にNFκB decoyオリゴヌクレオチド(NFκB DON),ノンセンスオリゴヌクレオチド(NFκB NON),コントロールとして生理食塩水を経動脈投与した後,セルレインを投与して急性膵炎を誘発し,膵炎の指標として血中のアミラーゼおよびリパーゼ活性を測定した。その結果,NFκB DON投与群の血中アミラーゼおよびリパーゼ活性はコントロール群に比べて有意に抑制された。NFκB DONはNFκBに結合し標的遺伝子の発現をmRNAレベルで抑制するのであるが,セルレイン誘発急性膵炎モデルにおいては完全ではないが膵炎の発症を抑制した。この結果は,NFκB DON投与が急性膵炎の新しい治療法になりうることを示唆すると考えられる。今後,急性膵炎発症後における効果,副作用などについて検討が必要である。
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