抄録
脳障害患者427例を対象に来院時の3種の病態パラメータ(バイタルサイン,緊急血液検査値,年齢・性別)から多変量解析で生死の判別(生命予後の予測)を行い,それにどのパラメータが関連しているか,その判別度がAPACHE IIスコアやGCSに比べてどうか,緊急血液検査値がどの程度有用かについて検討した。その結果,全脳障害患者を対象とした場合は,GCS,血中の尿素窒素(BUN),カリウム(K),白血球数(WBC),動脈血ガス分析によるPaCO2,BEが生死の判別に有意に関連していた。また,3種のパラメータによる生死判別度が最も鋭敏であったが,緊急血液検査値のみでもAPACHE IIスコアやGCSと同程度の判別精度が得られた。脳血管障害患者を対象にした場合には,緊急血液検査値のみによる判別度がGCSより良好であり,頭部外傷患者を対象にした場合には,GCSによる生死の判別度が最も優れていた。各患者群の同一患者においては,ICU収容時と比べて第7ICU病日のデータを用いたほうが生死の判別度が良かった。これらの統計学的手法によって,脳血管障害患者群と頭部外傷患者群において,生死の予測に対するGCSや緊急血液検査値の寄与度が異なることが明らかとなった。