情報通信学会誌
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論文
パブリシティ権侵害の準拠法
斉藤 邦史
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2014 年 32 巻 2 号 p. 83-92

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抄録

著名人の氏名や肖像が宣伝広告や商品事業等に利用された場合に問題となるいわゆるパブリシティ権の侵害における準拠法選択に関しては、市場の横取りという側面を重視し法適用通則法17条の適用範囲に含める見解と、信用毀損との類似や肖像等の人格的側面を考慮して19条の適用範囲に含める見解とが対立している。本稿では、パブリシティ権の侵害における準拠法の選択について、周辺事例に関する裁判例および学説の概観を通じて、見解が分かれている通則法の解釈を検討し、以下の考察を得た。第一に、19条の定める単位法律関係の範囲は、人格的な権利利益の侵害に限定されると解すべきである。第二に、パブリシティ権の侵害における法律関係の性質は、人格権としての氏名権や肖像権との区別に鑑みて、不正競争の一類型と理解すべきである。第三に、パブリシティ権の侵害を理由とする差止請求と損害賠償請求は、いずれも17条および20条により準拠法を決定すべきである。

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