2016 年 34 巻 2 号 p. 85-97
「電子メール」と「音声通話」は、3G/LTE 携帯ネットワーク事業者の場合であれば同じスマートフォン等の上で提供され、また、固定ネットワーク事業者の場合でも同じ機器上で提供されることはないもののバンドルしてサービス提供されることから、相互に利用が進んでいる。本稿の分析からは、スマートフォン等や PC にアプリをインストールすることにより利用できる OTT 事業者のサービスのうち、既存の「電子メール」や「音声通話」サービスから OTT 事業者が提供するチャット機能へ比較的容易に橋渡しされることが明らかとなった。更に、一旦アプリをインストールするというハードルを超えて、チャット機能の利用まで進めば、OTT 事業者が提供する別サービスである無料通話機能へ利用が拡大していくパスも明らかとなった。この傾向が今後も続くとすれば、それぞれの機能が相乗的に利用されていくことが想定される。また、LINE、Skype 等の無料通話機能やチャット機能の利用開始について、LINE のチャット機能の直近の加入率の増加と正の相関関係があることも判明した。このようなネットワーク効果は、アプリそのものによるものではなく、アプリにより提供される個々のサービスを基として捉えているものであるが、OTT 事業者がアプリそのものを通じて行使する市場支配力を把握することにつながり得るものであることから今般計測したものである。