情報通信学会誌
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34 巻, 2 号
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論文
  • LINE等の無料通話・チャット機能の受容性、利用動向及び3G/LTE携帯ネットワーク及び固定ネットワークにより提供されるサービスとの関係
    岡本 剛和, 中村 彰宏
    2016 年34 巻2 号 p. 85-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    「電子メール」と「音声通話」は、3G/LTE 携帯ネットワーク事業者の場合であれば同じスマートフォン等の上で提供され、また、固定ネットワーク事業者の場合でも同じ機器上で提供されることはないもののバンドルしてサービス提供されることから、相互に利用が進んでいる。本稿の分析からは、スマートフォン等や PC にアプリをインストールすることにより利用できる OTT 事業者のサービスのうち、既存の「電子メール」や「音声通話」サービスから OTT 事業者が提供するチャット機能へ比較的容易に橋渡しされることが明らかとなった。更に、一旦アプリをインストールするというハードルを超えて、チャット機能の利用まで進めば、OTT 事業者が提供する別サービスである無料通話機能へ利用が拡大していくパスも明らかとなった。この傾向が今後も続くとすれば、それぞれの機能が相乗的に利用されていくことが想定される。また、LINE、Skype 等の無料通話機能やチャット機能の利用開始について、LINE のチャット機能の直近の加入率の増加と正の相関関係があることも判明した。このようなネットワーク効果は、アプリそのものによるものではなく、アプリにより提供される個々のサービスを基として捉えているものであるが、OTT 事業者がアプリそのものを通じて行使する市場支配力を把握することにつながり得るものであることから今般計測したものである。

  • 米国での聞き取り調査を手がかりに
    藤原 広美
    2016 年34 巻2 号 p. 99-108
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究は、民主主義に必要な「言論の多様性」に米国新興デジタル・ニュース・メディア(以後、新興メディア)が貢献しているのかを実証研究を通じて分析する。本稿では、新興メディアのジャーナリズムを、主流ジャーナリズムと異なる視点や情報源でニュースを発信し、多元的民主社会で必要な「代替的公共圏」の形成に寄与する AM を継承したものと捉えている。そして、新興メディアが AMの特徴を持つならば、言論の多様性に貢献するのではないかとの仮説を立てた。ランダムに選択した米国東部地域の新興メディアに質問票による選択回答と自由回答方式の聞き取り調査を実施したところ、送り手側の実践に AM の特徴と重複するものがいくつか確認され、新興メディアが「言論の多様性」へ寄与している可能性が示唆された。また主流・新興の両者は常に対抗的でなく、同質化の傾向も示された。

  • 安岡 規貴
    2016 年34 巻2 号 p. 109-123
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    この研究は Google に対する我が国の DMCA テイクダウンノーティスの利用実態を Google 透明性レポートおよび Lumen の 2015 年上半期までのデータを利用することによって分析する。その結果、我が国において DMCA テイクダウンノーティスは、主にアダルトコンテンツと同人の著作権者が関わることによりかなり活発であることがわかった。さらに Google によって不正利用とされた削除リクエストおよび何らかの理由で対応されなかった削除リクエストが多いという問題点が明らかになった。これらの事実を基に、本稿は DMCA テイクダウンノーティスが適切に利用されているかどうかを社会全体で注意して見ることおよび申立者の DMCA テイクダウンノーティスの適切な発行を促すことを提案する。

論説
  • 海野 敦史
    2016 年34 巻2 号 p. 125-135
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    「放送の地域性」が放送政策の重要理念の一つとなってきた米国においては、さまざまな形でその制度的確保に向けた取組みが行われてきたが、特に直截的な措置として注目されるのが、地上放送局の免許付与に関して一定の行為規制を連邦通信委員会(FCC)が課すものである。その具体的な方法をめぐっては、米国憲法修正1条との関係から番組規律を最小限に抑えることに対する必要性が生じることを背景として、古くから FCC が試行錯誤を繰り返してきたが、2000 年に低出力 FM ラジオ放送局免許が創設されて以来、かかる行為規制を充実させるための取組みが顕著になっている。とりわけ、地上放送局と地域社会との対話の強化を指向した地域の番組の取扱い等に関して「公共検査ファイル」による情報開示を義務づけるための規律がその中心的地位を占めている。この公共検査ファイルによる情報開示については、FCC のオンライン上の統合データベースに掲載されることとなっており、近年は地上放送局のみならず CATV 事業者や衛星放送事業者等についても同様の義務が課されるなど、拡充される傾向にある。

  • 齋藤 長行
    2016 年34 巻2 号 p. 137-143
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/06
    ジャーナル フリー

    我が国では、青少年のインターネットの利用から生ずる諸問題に対する方策として、フィルタリングの利用が青少年インターネット環境整備法に規定されている。しかし、そのフィルタリングの利用普及が進んでいない。本法では、その利用はオプトアウト方式よるデフォルトルールとして規定されている。行動経済学ではオプトアウト方式は有効な政策手段の一つとして議論されているが、本政策においては十分に機能しているとは言えない。本稿では、デフォルトに関する理論的考察を行うことにより、現状のフィルタリング普及政策における問題について検討した。さらに、現状の問題を改善する方策としてフィルタリングに対する保護者の理解を深めるための、意識向上のための施策を講じることの必要性と、デフォルトルールの改善方略として、スマートデフォルトの有効性と課題について論じた。

寄稿論文
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