農地を活用して飼料自給率向上に取り組む家畜飼養形態を「土地利用型畜産」ととらえ,放牧・飼料栽培をともなう『放牧タイプ』と飼料自給率が類似する耕畜複合経営の『複合タイプ』の飼料資源調達,農地利用などの実態を調査し,物質および窒素フローを作成・比較した。飼料の自給率は同水準であるものの,作成した農家別窒素フローは,両タイプで明らかに異なった。作成した窒素フローを用い,家畜飼養に投入される総窒素量に占める内部資源由来の窒素量の割合を「内部N寄与率」,外部由来の窒素量に対する内部循環の窒素量の割合を「内部循環N比」,農地・放牧地への窒素投入量と作物等による農地からの窒素取り出し量の差を「窒素負荷流出ポテンシャル」と定義し,両タイプの比較を行なった。その結果,「内部循環N比」がより大きく,「窒素負荷流出ポテンシャル」が大幅に小さい『放牧タイプ』は,内部循環に基づく窒素調達の度合いが高く,負荷流出リスクが小さい飼養形態であると考えられた。