2009 年 77 巻 2 号 p. 107-112
止水矢板の浸透破壊事故のような問題は小規模ではあるが,多発している.これらの問題に対し止水矢板周辺地盤の変形量と破壊に至る水頭差に関しての有効な予測方法の確立が求められている.本研究では止水矢板及び周辺地盤の破壊のメカニズムを解明することと,現在実務設計に用いられているTerzaghiの方法の再検討を目的とする.そこで,本研究では密度の異なる固定矢板背面地盤の定常流浸透破壊の実験を行い,弾塑性有限要素法による崩壊解析を適用した.本研究では有限要素法による浸透解析により得られた浸透力を外力として弾塑性有限要素解析法に入力するという手法をとり,その有効性を確認した.また,空間的に固定されている矢板に関して,緩詰め地盤以外ではTerzaghiのプリズムが矢板背面地盤の浸透破壊メカニズムを充分表現できないことが分かった.