抄録
本研究は,トキの主要な餌資源であるドジョウを対象として行われた拠点的整備によって,ドジョウの生息個体数を確保できるか検討したものである.標識再捕獲調査の結果,調査期間中の対象地区におけるドジョウの生息個体数は,水田で1.5個体/m2,水路で5.2個体/m2と推定され,トキの野生復帰に必要な生息量を上回っていることが明らかになった.この結果は,環境に配慮した水路や水路魚道,水田魚道,それに水田の承水路が効果を発揮したためであると考えられる.また,これらの環境配慮施設の整備は対象地区内に限定されたものであったが,ドジョウの行動範囲が広くないこともあって効果が発現したものと推測される.このようなことから,一定範囲の整備によってもドジョウの生息個体数の維持に効果があることが分かった.