2009 年 77 巻 6 号 p. 645-656
開発途上国では,参加型水管理の実現へ向けた支援が行われているが,その効果は必ずしも持続していない.これまで参加型水管理の実現方策や持続要因が議論される一方で,支援事業の評価の際に行われる効果の持続性(自立発展性)の判断については,あまり検討されていない.本報では,わが国の政府開発援助により参加型水管理を支援するためアジアモンスーン地域で実施された8つの技術協力プロジェクトを対象として,自立発展性の視点から事業評価の現状を分析した.その結果,評価指標の相互関係を十分に認識していないと,1つの指標を達成するための活動が別の指標の達成を意図せず阻害することになりかねないこと,現行の評価ガイドラインは,持続的な水管理のための根幹となる視点が欠けていること,したがって,自立発展性を的確に判断できない危険性を含んでいること,等を明らかにした.