抄録
糖蜜を原料とするバイオエタノール生産においては,製造過程に低pHで,高BODの蒸留残渣液が多量に排出される.この残渣液の処理はバイオエタノールの持続生産の制限要因となる.本研究では,残渣液を肥料として農地に還元する可能性を検討するため,残渣液の性質を明らかにし,残渣液の肥料としての有効性と土壌環境に与える影響を室内実験と圃場施用試験を行い検討した.その結果,残渣液はカリウム含量が他の養分に比べて多く,塩素を多く含み,CODや色素が高かった.慣行肥料の窒素代替として,残渣液を大量に農地還元する場合,特に施用初期において窒素飢餓を生ずることや,降雨時の塩素イオンや色素の溶脱による地下水の汚染が制限要因となり,施用時期と施用土壌条件などを十分に考慮する必要がある.ただし,トマトとダイコンの生育において,慣行肥料のカリ成分の1/3程度の残渣液の農地還元は有効であることが明らかになった.