2010 年 78 巻 5 号 p. 419-427
魚類等の遡上と水理調査が実施されている岩木川取水堰の全面越流型階段式魚道において,水中TVカメラを用いて2006年と2007年に現地観測を行い,魚の遊泳行動と流況との関係について調べた.その結果,1)魚はプール中央部,上流隔壁の切り欠き背面下層部を多く利用し,下流部隔壁周辺は最も利用されないこと,2)魚は全体的にプールの底部(0~20cm)に位置し,プール内の切り欠きや潜孔の卓越流を感知して魚道プール中央部の低流速空間で自由遊泳しながら遡上すること,3)切り欠き背面から遡上していく遊泳魚は上昇流が生じる隔壁沿いと越流水脈の下面から,吸盤を持つ底生魚は隔壁や側壁にくっつきながら移動してそれぞれ遡上すること,などが明らかにされた.