本研究では,館野で観測されている長波放射量から有効長波放射量を求め,Penman型蒸発散量推定式で用いられることが多い3つの有効長波放射量推定式の精度について比較した.その結果,以下のことが明らかとなった.(1)Penmanが提示した推定式は,誤差のばらつきが小さくないものの,比較した式の中でRMSEは最小となる.(2)FAOで推奨されている2式は年間を通して有効長波放射量を過小評価する傾向がある.(3)わが国での年可能蒸発散量の推定に,Penmanの推定式を用いると推定誤差は小さいものの, FAOが推奨している2式を用いると,100 mm前後過大評価する可能性がある.(4)今後,精度の高い長波放射の測定に基づき,わが国に適応した有効長波放射量推定式の係数について検討する必要がある.