2011 年 79 巻 2 号 p. 45-53
本研究では,国営農地再編整備事業において改修された岩手県奥州市胆沢区を流れる白鳥川・原川排水路の生態系配慮工法区間を対象に,改修前後の魚類と水路環境の推移を明らかにして,水路改修が魚類の生息に及ぼす影響を考察した.その結果,次の知見が得られた.1)直線とした区間では,改修後に寄州が形成されず,湿生・抽水植物が生育しなかった.また,魚類の種類数,多様度指数が減少した.ドジョウの密度のみが高くなり,改修前を基準とした類似度指数は低下して改修後約5年を経ても回復しなかった.2)屈曲させた区間では,寄州に湿性・抽水植物が生育した.また,改修前後で魚類の種類数,多様度指数に大きな変化は認められなかった.ドジョウ,アブラハヤ,ギバチの密度が高くなり,類似度指数が改修前と同程度になった.3)屈曲かつ急勾配とした区間では,水衝部に造成した淵が形成され続けたが,緩流域の形成が不十分であった可能性が考えられた.