抄録
有明海湾奥を対象とした移流分散シミュレーションモデルを構築し,ノリ養殖施設の高密度配置がノリの成長に与える影響について検討を行った.モデルには,2次元単層モデルに干潟処理を導入したものを用い,有明海の潮流速および塩分について現況の再現計算を行った.その結果,実測値との良好な再現性が得られ,再現性の高いシミュレーションモデルが構築できた.次にノリ養殖施設の配置方法について,5つのシナリオを対象としたシナリオ分析を行った.各シナリオの評価にノリの窒素同化速度との関係を表す実験式を導入した.その結果,ノリ養殖施設の配置密度を小さくするシナリオでノリの成長要因である窒素同化量の改善が見られ,ノリ養殖施設の高密度配置がノリの成長に負の影響を及ぼしていることが示された.さらに,シナリオ分析により,ノリ養殖施設のより適した配置方法が提案できた.